那覇家庭裁判所コザ支部 昭和48年(家)487号 審判 1974年5月02日
申立人 吉沢正亀(仮名)
主文
本件申立を却下する。
理由
申立人はその名「正亀」を「正紀」と変更することの審判を求めた。
申立ての実情並びに当庁調査官屋良早苗の調査報告書記載によると、申立人の名「正亀」は「せいき」と音読みで呼称するが、初めての一般人や特に免許関係その他のことで官公署等では「まさかめ」と訓読され、正しく名が呼称されることが少く、生活に支障をきたしている。そこで正しく呼称されるために「正紀=せいき」と同音違字に名を変更したいために本申立に及んだことが窺われる。
よつて、本件申立の当否を審案するに、申立人提出の疎明資料及び申立人本人審問の結果によると、申立人の名が申立人主張のように多くの場合「まさかめ」と訓読で呼称されている様子が認められる。そうであれば、申立人の名は呼称の点で「せいき」と「まさかめ」とではその同一性が疑わしく、「正亀」は漢字の点では何ら問題がなくともその読み方において正しく呼称されなければ命名された本来の呼び名に名を変更する正当な事由があるものと解する。ところで本申立で改めようとする申立人の新しい名「正紀=せいき」はこれまた現在の名同様少くとも「まさのり」と訓読で呼称されることが十分予測され、申立人の改名の事由(目的)に沿わないことになることは明白である。そこで当裁判所は申立人に対し新名による右の事態の生ずることを釈明し、申立人の名が正しく呼称される選字を考慮することを要請したが申立人は頑としてこれに応じない。しかして当裁判所は名変更の正当な事由を判断するに際し改名しようとする名についてもその適否を審査する必要があるものと解し、本件の場合「正紀」も「正亀」と同じく訓読みで呼称され必ずしも申立人が意図するごとく「せいき」と呼称されるとは限らないから申立人の新しい名「正紀」は改名するに不適当であつてこの点で正当な事由がないという外はない。よつて本申立はその理由なきものとして主文のとおり決定する。
(家事審判官 片岡褝教)